3月に見た作品を、地元の飯田橋ギンレイで2度目の鑑賞です。
前も大変面白かったですが、2度目はより深くハマりました。綴られる1987年と、その時代を各人が思い出す16年後の2003年、時間を行き来するその構成の上手さには舌を巻きます。
世之介が、長崎から市ヶ谷の大学へやって来た1987年。斉藤由貴の巨大広告に、前髪をフワフワに持ち上げるロングヘアの女性。武道館の入学式で、たまたま隣り合わせた倉持くんは親友となり、人違いで声をかけたクールなイケメン加藤くんとは、「友だち紹介5%引き」のために一緒に教習所へ、そこで加藤くん目当てで声かけてきた女性が、ダブルデートに連れてきた幼なじみの祥子さんとは、忘れられない恋をすることに…。
洗面器に足を突っ込む真夏のワンルーム、夏休みに帰省した長崎、秋のサンバイベント、クリスマスの初雪、バレンタインで間違えて配達されたチョコレート、季節らしい出来事とともにほぼ1年間、大学1年生の世之介が、どんなきっかけで各人と関わっていくのかが、丁寧に描かれています。
長崎の夜の海で初キス!のはずが、ベトナム難民の上陸に鉢合わせ。天然のお嬢様・祥子さんは、多分その経験がきっかけで、16年後の2003年、NPO法人で途上国を飛び回る女性になっています。「死んでる」と噂される謎の隣人に、間違えて配達されたチョコを届けに行った世之介は、始めて彼が報道写真家だと知ります。世之介が16年後にカメラマンのなっているのは、その人の作品と、借りたカメラがきっかけなのでしょう。加藤くんは高級マンションで男性と暮らし、世之介の憧れ、破産寸前の男からBMWを巻き上げるような真っ赤な口紅の千春さんは、16年後はナチュラルメイクのラジオパーソナリティに。そして、この千春さんが報道する、ある夕方のニュースで、世之介が電車事故で亡くなったことが、見ている我々にもわかります。
主人公が不慮の死で亡くなっているので「悲劇」なのですが、パンフレットに記述があるように、原作の吉田修一さんは監督の沖田修一さんに「コメディにしてほしい」とだけ伝えたとか。ラスト近く、都庁付近を祥子がタクシーで通りながら、16年前の仲良しの自分たちを幻視するようなシーンもホロリ、終わりの、余貴美子さんのナレーションもホロリ。泣けます。が、悲劇ではないんです。きっと、DVD買って、何度も見てしまうだろうことが予測されます(笑)
長尺160分とは思わせない作品でした。
「横道世之介」 2013 監督=沖田修一