丸亀・豊島・ボルタンスキー

高松へ1泊、小豆島へ1泊のプチ旅行に行ってきました。

海際の巨大カボチャ(草間弥生)などを見てみたくて直島へ出かけたのが3年前。その折も高松へ1泊しましたが、その時は金刀比羅宮の方へ行ってしまい、今回は、その折訪問を見送った丸亀へ。

◆丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
JR予讃線丸亀駅の真ん前。天井と左右の側壁で囲われた空間に、巨大な壁画とオブジェが設置されている美術館正面は、何度も写真で見て、訪れたい美術館でした。開催中の企画展は「塩田千春」 2001年の横浜トリエンナーレ、巨大なドレスに水が流れる作品を良く覚えています。今回は、巨大な白いドレスに輸血のチューブのようなものが夥しい数絡み付く作品、使い古しのトランクが、やはり夥しい数、ゆるい弧を描いて積み上げてある作品、そして廃船に、天井に設置されたいくつものシャワーから終始、雨のように強く弱く水が降り掛かる作品。いたはずの人間がいなくなり、気配だけがそこに残っているような「喪失感」というか、どれもちょっと寂しい心持ちになります。好きですが…
常設展示の方は、2010年オペラシティの「猪熊弦一郎展・いのくまさん」では残念ながらあまり見られなかった、NY時代のThe Cityシリーズをまとめて見ることが出来ました。フラットな原色をバックに、幾何的な黒い街並が一直線に並ぶこのシリーズ、展示空間も広々と気持ちよく、近ければ何度でも通いたいところです。
小豆島はのんびり観光する予定でしたが、丸亀美術館でもらった「旅の美術手帳」(スタンプラリー仕様。瀬戸内海周りの13の美術館の紹介と、手帳を提示すると2館目から料金が割引に)を見ていたら、小豆島の隣の豊島(てしま)にど〜しても行ってみたくなり、高松空港の帰りの飛行機の時間をにらみつつ、かなりの綱渡りでアート巡りをしてしまいました。
小豆島・土庄(とのしょう)港からフェリーで30分、豊島・唐櫃(からと)港へ。

◆豊島美術館
建築家・西沢立衛とアーティスト・内藤礼のコラボ作品だそうで、卵の殻をカポッと伏せたような建築物に、内部は純白、防水加工を施した真っ白な床の小さな穴から、少量の水が迫り出してきてコロンとした水玉に。微妙な起伏のある床を、生き物のようにあちらこちらに転がります。音の聞こえ方もくぐもって平衡感覚も狂いがち、「異空間に在る」感は、なかなかのもの。

◆心臓音のアーカイブ
豊島美術館から、タクシーで15分程度のところに、クリスチャン・ボルタンスキーの小さな美術館が。林の中にあるので、途中からは徒歩。ヤブ蚊にも刺されます。
世界中で集めた心臓音の保存データを好きに聴ける「アーカイブ」と、間口は狭いけれど奥行きのある真っ暗闇の部屋で、心臓音に合わせて電球が明滅する「ハートルーム」。心臓音というから、胎内感覚でゆったりするところなのかと思いきや、爆音で、闇の奥から何か迫り出してきそうな恐ろしい感じがして、あまり長くはいられませんでした。古い写真が蠟燭に照らされる祭壇のような作品、部屋の真ん中に置かれた廻る幻灯機が、周りの壁に影絵を映し出す作品など、静謐なものしか知らなかったのでビックリ。新たなる展開なんでしょうか…
面白いのは、希望すれば自分の心臓音をアーカイブに加えられること。「ボルタンスキー作品に参加するぜ!」とばかり、一人1500円も払って、連れ合いと二人40秒間の心臓音を録音してきました。その録音CDも記念にいただけるのです。他に誰もいなかったので、自分の心臓音で作品を体感させてもらえたのは、ラッキーでした。

豊島-高松間フェリーは、通勤仕様で昼の便が無いので、小豆島経由でアタフタ船を乗り換えます。さすがに疲れました。
それにしても、なぜこんなにまでがんばって、アート巡りをしているのでしょうね、自分…
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館「塩田千春 私たちの行方」
豊島美術館 建築-西沢立衛 アート-内藤礼「母型」
心臓音のアーカイブ クリスチャン・ボルタンスキー

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