ラストターゲットを観てきました。
魅かれた理由は「ジョージ・クルーニー」「イタリアの城塞都市」でしょうか。邦題が大仰ですが、見た印象では原題「The American」の方がしっくりきました。
スナイパーとして生きてきた男が、この仕事を最後に、と思った矢先に潜伏先のスウェーデンで狙撃され返り討ちに。ローマの雇い主の指示で、アブルッツォ州の城塞都市カステル・デル・モンテに移るところから始まります。ここら辺の町並みは、白いんですね。街中は、アッシジやサンジミニャーノのように、細かい路地が迷路のよう。
そしてクルーニー。ほとんど喋りません。笑いもしません。鏡やガラスやティーポットで、やたらに自分の白い歯を確認する弁護士(ディボース・ショー)や、逃げ込んだラジオ局で成り行きで歌を歌ったら、ヒットして調子に乗る気のいい脱獄囚(オー・ブラザー)、自分で言い出せない雇い主に変わって、ベラベラ口八丁でリストラを敢行する営業マン(マイレージ マイライフ)も、なりを潜めます。依頼されたライフルを、緻密に削って削って組み立てていく作業の合間に、懸垂と腕立てとストレッチ。日々、地味です。でも、作業シーンはアップ多用で、なかなか美しく丁寧に撮られていて気持ちがいい。2〜3度出てくる、重低音の演出過多な音楽は、押し付けがましくてイマイチですが、ピアノ曲などは美しいし、基本的には静けさが良いです。
ラスト近く、ライフル受け渡しで訪れる殺風景なドライブイン、依頼人の美女が化粧室へ席を立ち、一組いた客が帰り、カウンターにいた店の人間も奥へ入り、シン…とした店内にクルーニーが一人取り残されます。「俺たちに明日はない」のクライマックスのようなシーンなので、いきなり蜂の巣にされるのでは、とドキドキしますが、静かなまま。ドカドカしい場面は最後までなく、打ち合いは常に1対1です。
「エドゥアールド、エドゥアールド!」(エドワードのイタリア語読み)と、女の声が空しく響くラストもなかなか。欲を言えば、画面が美しいのですから、街中などもう少し落ち着いて長回しをしてほしかったです。
カステル・デル・モンテ、行ってみたくなりました。Googleで見てみたら、緑色の中に、ポツネンと地名があるばかり。本当に山の中のようです。車がなければ無理かも…
「ラストターゲット」The American 監督=アントン・コービン