名和晃平 SYNTHESIS展

木場の現代美術館に「名和晃平 SYNTHESIS(シンセシス)」展を観に行きました。
最初の部屋が、物がフラットに見える真っ白な照明で、いきなり立ち眩みが。昔の「ジューシーのキャップ」(古い…)のような材質の半透明のボックスがいくつか置かれていて、近寄ってあれこれ角度を変えて見ると、中にスニーカーやサボテンやフランスパンがあるような、でも表面の3D画像だけで実態はないような。
進むと、大小無数の透明の球体に覆われた鹿の剥製。水晶玉ほどの大きな球体を通して、かろうじて鹿の毛並みがわかる程度で、しかも球体に客の足下が逆様に映ったりするものだから、いよいよ自分が何を見ているのかわからなくなります。
次の部屋には、軽石か珊瑚の彫り物のような、プツプツモヨモヨしたオブジェ。小型な物は、「手榴弾?」「バナナ?」「盆栽?」と、なんとか形状がわかりますが、続く部屋の大型オブジェは、かすかに「馬の頭部?」ぐらいしか見分けが付かず。しかも、オレンジ色の照明は、青山トンネルの中ように色が抜けて肌も何も青く見え、客も作品も皆均質に見えます。
別の狭い部屋は、床にR(レッド)G(グリーン)B(ブルー)のドットが、グルグル寄せたり引いたりしながら投射され、微妙に床が傾斜していることもあり、平衡感覚が無くなって尻餅つきそうになったかと思うと、続く広い部屋は真っ暗で、床に埋め込まれた長方形の「牛乳池」に規則的に、丸い泡(またドットですね)がポコツポコツと、音を立てて浮き出ます。膝をついて覗き込まずにはいられない衝動が…。
面白い試みだと思ったのは、タイトルプレートが一切ないことです。
まずは、ともかく見続ける。だから、集中力が持続します。遠近感や平衡感覚がなくなって異世界に降り立つ気分になるのも、そのせいかもしれません。
見終わった後、解説付き見取り図が配られ、「あぁ、あれは発砲ポリウレタンというものですか」「あぁ、牛乳池はシリコーンオイルというものですね」「ピクセルシリーズ(PixCell=Pixel+Cellの造語だそうです)、フムフム、72dpiのドットでモニターが全てを映し出すように、3次元をドットで再構築とかなんとか?」などとお勉強が始まり、見取り図を広げつつ2回目に廻る時はもう「立ち眩み」もありません。
私は単純に、遠近、平衡、材質などが取っ払われていく身体感覚が、とてもハマりました。

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